読書の感想『減速して自由に生きる』
2018年05月11日
減速して自由に生きる ダウンシフターズ
高坂 勝著 ちくま文庫
スローライフというを記事や文を耳にすることはよくあります。しかし、読んでみるとたいていは気に入りません。私からするとスローに生きるという解釈がちょっとまちがっていると感じるのですよね。
その最たるものが、スローライフの反対側にあるものとして
「環境破壊」
「戦争と平和」
「競争社会」
「大量消費」
なんていうキーワードをあげるのです。
この著者も例にもれず、こういうワードを否定して、だからスローライフしましょうという内容です。私はたいていそういう考え方が気に入らないから、かなり読みにくかったですね。
著者は一人で小さな飲食店を経営しています。
週休2日とか3日で、お米や野菜を自分で作っているので売上に固執せずに家族で生活するぐらいには十分に稼げるそうです。小さくやるから材料にこだわって、手間ひまかけて心温まるお店づくりができるわけです。
まぁ、これはわかるわけですよ。
私自身も一人でやっているわけですから、胸糞の悪い人は追い返して、駄目なものは駄目だと言いたいことは遠慮なく口にして、周囲の人間の顔色を伺うことなしで仕事をしています。
ただ、だからといって違う考え方や生き方をしている人間を否定する必要はないんですよ。
料理店で考えるなら、
「何百人もの人たちに美味しいものを食べてもらってみんなを笑顔にするんだ!」
「結婚する2人と2人を祝うために集まった人たちの思い出に残る料理を作りたいんだ。」
こういう具合に、100人とか1000人単位の人たちの胃袋を満たすことにやり甲斐を感じる料理人だっているはずなんですよね。こういう事を考えたら大きいお店が必要だったり、一人じゃ無理だからチームを作って料理を作ったりするわけです。
ところが、スローライフを掲げる人たちはそういう人たちに、
「大量消費は環境破壊に繋がって地球を駄目にする。」
みたいな理屈でダメ出しをしているように感じられるので気に食わないわけです。
料理が作りたい人、環境について考えたい人、平和について考えたい人、競争したい人、小さくやりたい人は小さくやって、大きくやりたい人は大きくやって、そういう風に、すべての人が自分が生涯をかけて取り組みたいと思える事をやっていれば、世の中はすべてうまく周りはじめると考えています。そういう考えを持っていると、
「小料理屋の店主が環境についてえらそーに説教するな。」
なんて思ってしまうわけです。
自然環境が気になるなら、自然について生涯かけて考えている人がいるのだから、彼を信頼して任せろよ。私はそれでいいと思うんですけどね。
そういや、ちょっと前にプラスティックを分解するバクテリアかなんかが見つかったとかなんとかニュースでやっていましたけどね。こういう事を踏まえても人という生き物をもっと信頼しろよと文句をいいたくなります。
あと著者は、自らのスローライフをダウンシフト生活と命名しています。
その生活の素晴らしい点として、
・嫌な事をしなくていい
・家族との時間が増える
・ストレスのない生活
なんて事をあげています。
ただ、こんなもんなら別に田舎にいってダウンシフトしなくても、いくらでも手に入りますね。現実に私はそういう生活をしていますから。
で、さんざんコケおろしましたが非常にいい本だと思います。
体を痛めている人は、ほぼ間違いなく思考が硬直して視野が狭くなっていますからダウンシフトという生き方に触れてみるのはとてもよい機会になるのじゃないでしょうかね。ひねくれた私が読むといろいろケチをつけたくなりますが、大半の人にはすんり読める内容だと思います。
「休む必要がある時は休まんかいっ!」
と、何年か前に怒鳴りつけたことがあるのですが、それに対する返事は、
「主婦は休むわけにはいかない。」
というものでした。
こういう馬鹿なセリフをいってしまっている人にはとくにおすすめだと思います。
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