慣性の問題
慣性の法則はご存じでしょうか?
物体はそのままであろうとするという物理学の法則です。
運動している物体は運動を続けるし、停止している物体はずっと停止をしています。外部から何かの影響をうけるまで、物体はずっとそのままでいるわけです。
地球上でこの慣性の法則を実感することはまずありません。
地球の重力や空気の影響をすくなからず受けているからです。ですから、ボールを投げれば、必ず地面に落ちてきます。地面にボールを転がしても地面との摩擦ですぐにとまってしまいます。地球や他の天体の影響を受けないぐらい遠い宇宙空間でなければ目でみて確認することができません。
実は、この慣性の法則ですが、人の生活にも同じような事が起こります。
どういうことかというと、食べ過ぎで体を壊していたとします。
するとこの人はなかなか食事を減らそうとはしません。食事や間食のとりすぎで体を壊しているのを頭で理解しても、実際の行動はかわらないのです。そうして、しんどい、つらいと言い続けます。
また、こんな人もいます。
眠りすぎで交感神経の働きが悪くなった人がいます。そういう人に、これこれこういう理由であなたは体を壊しているから、自分にむち打って体を起こして動かないと駄目だ。と、説明します。本人もわかったやってみるというのですが、実際の行動には結びつきません。
どうしてこういう事がおこるかというと、その状態で安定してしまっているからです。体が悪かったり、病気があったりしても、悪いなりに安定してしまうという事があります。
ちょっと周りの人を見回してみてください。
10年前からずっと腰が痛いといっていたり、3日に1回は頭痛がするといっている人、風邪が1ヶ月ぐらい治りませんといっている、そんな人はみたことはないでしょうか?その人たちは体の状態が悪いなりに安定してしまっているのです。
油物やお酒の飲み過ぎで体を壊していたって安定しているから多少のことではそれ以上悪くなることはありません。だから、食事の内容をかえず、毎晩の晩酌を見直したりもしません。
1日10時間眠ってまだ眠いといっているような人は交感神経が悪くなっているのですが、10時間以上眠らないと満足できないような体になってしまいます。その悪い状態で安定してしまっているのです。だから、睡眠時間を減らせといったって、それができません。
これが人の体における慣性の法則です。
人間は体の状態悪くなると、悪いなりになんとか安定させようとする働きがあります。そうして安定した状態は、完璧ではないものの、生活する上で、さしあたっては問題ないという状態だったりします。また、状態が悪いから駄目というものでもなく、案外どこか悪い方が、長生きしたりすることもあります。それがある意味安定している状態だからです。