医学の進歩と患者の置き去り--エビデンスと経験の狭間で
2023年10月03日
最近、整体に訪れた人が、
「最近の若い医師は、エビデンスがどうのこうのという話しかしない。」
と話していました。
私は医師と直接話をする機会などほぼありません。ですから新鮮な情報のように感じたのですが、その一方で、
「やっぱりな。」
という思いも沸き上がります。
医師がエビデンスしか語らないことについて不満を述べた人は、おそらく専門家としての立場から、自分の体の状態について意見を聞きたかったのではないでしょうか。それにも関わらず、研究ではこうで、こういう論文が発表されていると、エビデンスの話を延々と聞かされるのです。自分のことをきちんと診断してくれていないと感じるかもしれません。
整体師として意見を言わせて頂くと、医学と医療はとてもおかしな方向に突っ走ってしまっている。
その結果、患者さえ置いてけぼりにしてしまっていると感じることがしばしばあります。実際に聞いた話を1つ紹介しましょう。ある医師の集会で、患者の薬の消費量を増加させる方法についての講演した医師が拍手喝采を受けたそうです。具体的には、特定の病気は遺伝による影響があるから、その患者の家族、親族すべてに予防のための投薬をするべしという内容でした。そうすれば薬の消費量が現状の数倍以上になるという訳です。
論としはわからなくはありません。
しかし、特定の病気になりやすい遺伝子要素をもつ可能性が高いから予防のために薬を飲みなさいというのは無茶すぎるとは思わないでしょうか。実は、その講演で語られた病気はガンだったのですが、現在の日本人のどの程度がガンがなるかを国立がん予防センターが平成19年に発表したデータがあります。それによると、男性の二人に一人、女性の三人に一人がガンを発症するというデータがあります。これはつまり、そのガン患者の親族すべてと考えると、おそらく日本人全員にガン予防の薬を飲ませようという内容の講演だったと考えてよいでしょう。また、この話を直接聞いてきたのはとある整体師ですので、好意をもってその話を聞けるような人間ではなかったということも念のために付け加えておきます。
現在のところ、そのような薬物の開発は現実になったという話は聞いていません。
しかし、現状の健康保険の負担がどのような状況になっているかを踏まえて考えてみてください。おそらくそのような薬が開発されれば日本という国は、健康を維持させるために国家財政を破綻に導く可能性も十分にあるでしょう。補足で付け加えると、最近、ある病気に効果があるとされて開発された先進医療にかかる費用は1000万円を越えているのですが、そのような情報も知っていると理解が深まることでしょう。
エビデンスの積み重ねで医療は確かに進歩しているのかもしれません。
その進化がさらに進んで高度な医療が広く受けられる社会になる可能性もあるかもしれません。しかし、紹介した講演において拍手喝采の話を聞くと、医師や医学者たちは我々とは違う方向を向いているような気がしてなりません。もしかしたら、すべてのガンが予防できるかもしれないとうことに拍手喝采する人もいるかもしれませんが、私には今日の医師たちがそのような志をもっているようには思えないのです。
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